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<番外>雨上がる
目の前で進が土下座をしている。
こないだの事を謝りたいと連絡が来たのだ。
勿論この事は光に報告したしお許しも貰っている。
門限は二十三時、アルコールはビール二杯まで。何かされそうになったら躊躇わず殴り倒す事。という条件付きだ。
いい歳をした大人が高校生に従うのはおかしな話なのかもしれないが、これは恋人の俺に対する独占欲で愛情で、俺はそれを嬉しいと思ってしまっているのだからしょうがない。
*****
進に連れてこられたのは小洒落た居酒屋で、個室にふたり。
個室でふたりっきりというのに躊躇わなかったわけではないが、俺はこいつの事を友達として信じていた。
「こないだは悪かった。ごめん!」
「あーうん。もう今後ないならいいよ」
土下座なんて落ち着かないのですぐに止めさせた。
進が座りなおしてすぐ店員さんがビールを持ってきた。
「――で、嫁さんとけんかでもした?」
「してない……。とういうかそういう事じゃないんだ。俺、俺さ、こんなこと今更って言われるだろうけど、新歓コンパで初めて会った時から本当にお前の事が好きだったんだ。軽いノリを装ったけど、それは断られた時の保険で。付き合えた時は今すぐ死んでもいいってくらい嬉しかった。だけどお前は身体も許してくれたけど必死さ? みたいなものはなくてさ。俺がいてもいなくても関係ないって感じでさ。別れようって言った時だってすんなりオーケーするし……だから、その時きていた見合い話を受けてしまった……」
進の目が涙で光ったように見えた。
「お前、あの時俺が別れないでって言ったら別れなかったのか?」
「別れなかった!」
少し食い気味に答える進にびくりと肩を震わせた。
そしたら今も恋人でいたかもしれないな。
だけど俺は――。
いきなり両腕をぎゅっと力強く掴まれた。
「いたっ」
「今でも! 好きなんだよっ!」
今日はまだ酔っぱらっていない。進の本心からの言葉なのだろう。
だけど俺は。
「離してくれ」
「――ごめん」
だけど俺は本当の恋を知ってしまったんだ。
お前ではない別の……。
「俺たちには確かに身体の関係はあったけど、お前の事は友達として好きだった。それに今大好きな人がいるんだ。――――だから、ごめん」
「――――そうか……。そうだよな……。こないだの子――か?」
「うん。世界で一番好きなんだ」
進は一瞬泣き笑いのような顔をしたが、すぐに『友達の顔』になって。
それから色々な話をして、別れた。
さぁ早く大好きなあの人が待つあの部屋へ帰ろう。
朝から降っていた雨はすっかり上がっていて、夜空に輝く無数の星たちが光への道を照らしてくれているようだった。
-終-
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