8雷から快晴そして天気雨

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8雷から快晴そして天気雨

「ガチャガチャ」  突然鍵が開けられる音がした。  え? 泥棒……?  腕で涙を乱暴に拭って、武器になりそうな物を急いで掴んだ。  こわ、こわ、こわ……!  恐怖で足をガクガクさせながらドアを睨んだ。  ドアが開けられる。  俺は先手必勝! とばかりにフライパンを振り上げて。 「わっちょっ一! 落ち着いて!」 「……? ――葛城……?」  葛城が大荷物を抱えて入ってきたところだった。 「何? なんでフライパン?」 「え? あ、いや、何でも……」  俺はフライパンを後ろに隠した。  葛城はじっと俺の顔を見ていたかと思うとふわりと抱きしめてきた。 「ちょっ、な、なに???」 「なんで泣いてるの? またあいつが来たんですか?」  そう言いながら鼻先を涙のあとにすりつけた。 「ちがっ……! これはお前が――っ!」 「俺がなーに?」 「捨て……捨てられたと……おも、思って…っ!」 「なんでそうなるのかなー?」  ちゅっちゅっと目元にキスを繰り返す。 「好きって言ったでしょ?」  甘い、甘すぎる。  進とこんなに甘くなった事なんかなかった。  好きって気持ちをさっき自覚したばっかりだし、どうしたらいいのか分からない。  そんな事を考えていたら葛城が俺の鼻先をがぶっと噛んできた。 「いたっ」 「今あいつのこと考えてたでしょう」  不機嫌そうに言った。 「ごめ……。甘くて……進とは甘くなった事なんかなかったなって……」 「もう! あいつの事考えるのなし! 俺の愛は一途なんだからよそ見しないで」  何度も何度も啄まれるようなキスをされた。  葛城の腕の中に収まったまま、しばらくして落ち着いた俺はどういう事なのか訊いてみた。  葛城はこないだの進への対応を見て、流されやすい俺の事が心配で怪我が治ったら正式に同棲するつもりだったらしい。  手続きとかは前もってやっていたそうだが、今日は住んでいたアパートを引き払って荷物を持ってきたそうだ。 「えー? 言ってよ――。車出したり荷造り手伝ったりできたのに」  ぷぅと頬を膨らませる。 「荷物っていっても鞄ふたつだし、元々少ないんです。それにいきなり来て驚かそうかと思って」  と悪戯が成功した子どものように笑った。 「大好きだよ。一さん。俺を好きにさせた責任とってね?」 「喜んで!」  そう言って自分の唇を葛城の唇に押し当てた。  大好きだよ。光。  ふたりで微笑みあうと、心がじんわりして涙が一筋流れた。 -終-
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