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3曇りのち・・・泡? ①
「葛城君、えーとどうぞ?」
アパートの鍵を開け中へ入るよう促す。
葛城は部屋に入るなり思いっきり顔をしかめて大きくため息をついた。
「――――汚い」
開口一番それですか! 流石イケメン! 流石DK!
あ、いや関係ないな。
俺の部屋が単に汚かっただけだな。
誰か来るわけでもなくなったから掃除もろくにしてなかったや。
テヘペロ。
「あ、うん。掃除する! そのへん座ってて?」
散らかった服や本を片付け、掃除機をかけせっせと掃除した。
葛城は座ることもせずだまって立っていた。
座るのも躊躇われるくらい汚くはないんだけどな?
三十分ほどで掃除が終わると葛城はやっと腰を下ろした。
「お腹すいた、よね。何か食べたいものあるか?」
「――ない」
「そ、そうか。じゃあカレーにしよう。男の子だし好きだろう? カレー」
手を洗って早速調理に取り掛かると背後からぼそっと「別に」という声が聞こえた。
うわーまじどうすんのこれ。勢いで連れてきちゃったけど。
――世話はなぁ、まぁ俺が怪我させたんだから何でもするつもりだけど、空気が重たいんだよなー。
息がつまるっつーか。
ちらりと後ろを伺えば葛城は黙ってテーブルの一点をみつめていた。
あぁ、葛城も居心地悪いわな。
俺が悪いんだから快適に過ごしてもらわないと、な。
空気重いなんて言ってられないよな。
まずはお互いのことを知る事から始めよう。
面と向かって話すのはお互いまだ慣れないから料理を作りながら背中で語る。
あ、いや? 違うか。背中を向けてしゃべる。
「自分高校何年生?」
「――――三」
「じゃあ十八歳? 俺は二十三歳。お菓子を売るお仕事やってまーす。って言っても実際に店で売ってるわけじゃなくてお菓子を売ってくれるお店に売る仕事なんだけどね。俺、お菓子超―好きでさ。お菓子メーカーに就職したら毎日お菓子食べ放題なんじゃないかって思ってさ、それでこの仕事就いたんだけど、開発じゃなくて営業だからお菓子まったく食えねーの。それに気づいたのが入社して一年もたってからで進にも「ばかじぇね?」って笑われてさ、ははっ」
「――――――進?」
突然の葛城の声に振り返ると、テーブルをみつめて聞いているのか聞いていないのか無反応だった葛城がじっとこちらを見つめていた。
うお、ひっかかるとこそこ?
「――あーと友達?」
嘘は言っていない。今はただの友達だ。
「どうして疑問形……。――――長いの?」
「へ?」
「――――だから、付き合い!」
あれ? 幻聴か? どこからか舌打ちした音が聞こえたぞ?
「――――大学からだから……五年……?」
「ふーん……」
それだけきくと興味が失せたのかまたテーブルに視線を戻した。
この美形君何考えてるかわっかんね――――――!
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