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6晴れのち晴れ
「…………」
「…………」
葛城は何事もなかったかのように座って食後のコーヒーを飲んでいる。
「えーと?」
「なんですか? キスしたかったですか? 襲われたかったですか?」
「や、や、や、や! そんなこと言ってないだろ! マジありえないから!」
「でも、あのままだったら確実にやられてましたよね? あの酔っ払い。俺がいても気にせず突っ込んでたんでは?」
「つつつつつつ突っ込むとか―――!」
何言ってくれちゃってるの!
俺のほうが真っ赤になるわ!
「――――好きです」
「――――――――はい?」
「だから一さんのことが好きだって言ってるんですよ!」
真っ赤な顔で葛城はそう叫んだ。
「…………!」
俺は池の鯉みたいに口をぱくぱくする事しかできなくて。
ドキドキドキドキ。
どちらの心臓の音なのか。やけに大きく聞こえる。
「俺、不愛想だし人付き合い苦手なんだけど、一さんは俺が戸惑って失礼な態度いっぱいとっちゃったのにいつも笑顔で、優しくて……。そんなの……好きになっちゃう……」
えー? 不機嫌に見えてたのって戸惑ってただけなの?
うわーうわー超かわいいんですけど……。
「何笑ってるんですか……っ」
「俺も……好き? ――――かも?」
「なんで疑問形!」
「だって分からないんだ!」
本当に分からなかった。好きってどうなったら好き?
進の時は、いっしょにいて楽しかったけどドキドキとかする事もなかったし、好きだったのか? と訊かれてもやっぱり未だにはっきりと答えられない。
葛城の事は……。
葛城の事を考えた瞬間、ぶわりと顔が熱を持ったのを感じた。
え、え? いきなり熱い!
なんだこれ、なんだこれ、なんだこれ?!
ひとりパニック状態になった俺に葛城はため息をひとつ吐いた。
「分かりました。これからじーっくり分からせてあげます。覚悟しておいてくださいね?」
そしてにやりと笑った。
「――――お手柔らかに……」
そう答えるだけで精一杯だった。
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