勿忘草

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 彼女が自殺してしばらくした頃から、私は勿忘草を見ると吐き気を催す ようになった。あの時の光景と、あの時感じた重みが勿忘草を見るたびに 戻ってくるような気がして、だんだん勿忘草を直視できなくなり、嫌いに なった。  今ではさすがにそんなことはないけれど、私は未だに勿忘草を直視 できないでいる。自分の過去の過ちとその結果が眼前に突きつけられるの を恐れ、一度感じた重みが再び戻ってくるのを恐れているのだ。
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