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1度疑問を持ってしまうと、そこからその疑問は更に大きくなってしまった。
大学を卒業して就職しても、ロクな人生が待っていない。
勤労の義務?納税の義務?誰がそんなこと決めたんだ?
ではきちんと義務を果たせば、それは確かなものとして必ず報われるのか?
そんな疑問が大きくなってしまい、アルバイトも辞め、大学に通うのもやめてしまった。
階下から聞こえてきた両親の話し声には、自分達の育て方が間違っていたのか?という苦悩が入り混じっていることを感じ取れた。
両親には多少申し訳ない気持ちがあるが、ただ逆に聞いてみたい。
「あなたたちはそんな人生でいいのか?満足しているのか?」と。
両親の話し声を聞こえていないフリをして、重い空気になっている台所を避けるように「ちょっとコンビニに行ってくる。」と声を掛け、表に出た。
コンビニに着いたが、しばらくはマンガなどを立ち読みし時間を潰した。自分のことで悩んでいる両親がいる家には、早く帰りたいとは思わない。
話が終わったであろう時間を見計らい、飲み物とスナック菓子を買い、コンビニを出ようとした時だった。
自動ドアを出た瞬間、目の前がグニャリと曲がった。眩暈なのか何なのか倒れそうになるのを堪えて目を閉じていると、しばらくするとその眩暈のような感覚も治まってきた。
遠くのほうで、誰かがしゃべっている声が聞こえる。
ただそれは、喋っているというよりも、演説のようにも聞こえた。
「この大変な時代を乗り切るには、ここにいる君達の力が必要です。」
今度ははっきりと聞こえてきた。
「入職おめでとう。諸君の活躍を祈念し、私からのお祝いの言葉とさせて頂きます。」
はっきりと聞こえたその声に、ゆっくりと目を開けた。
目を開けると、自分以外の全員が拍手をしていた。
どこだここは?あたりを見渡すと、自分もそうだが、リクルートスーツに身を包んだ集団の中にいることに気がついた。
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