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第一話
「鳥囲岬様のより一層のご活躍をお祈り申し上げます」
岬が福岡市内の会社からお祈り通知を受け取ったのは二十一社目。希望する会社は全て内定が取れなかった。
一体何がよくなかったんだろう。転勤は出来ません、福岡本社に勤めたいです。市外に出ない部署がいいです、とやたら条件を付けたのがいけなかったんだろうか。
福岡に本社のある割と大きな会社ばかり狙ってしまったのも敗因の一つなのだろう。小さな会社にも目を向ければ良かった。
でも、もう内定を取るには遅すぎる。ほとんどの会社が新卒の面接を締め切ってしまっているだろう。これから先一年以内、中途採用にならないうちに仕事が決まって欲しい。
今年の春、岬の桜は咲かず、散るばかり。
部屋の椅子に座って、手紙を片手にため息をついた。
母親にちょっと出掛けてくると言って家を出たのはいいが、別に行く当てなどない。近所をふらふらと彷徨って、落ち込む気分を慰めようと思ったのだ。
この際、市外の会社に挑んでみようかと言う考えが頭をよぎるけれど、自分が「福岡市内から出られない体質」であることを思いだして諦めた。
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