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岬は生まれてこの方、市外に出たことがない。母親からも市外には出ないほうがいいと忠告されるほどだ。もちろんなぜなのかはいろいろと試したのだが、病気だったり怪我だったり、何らかの理由で不可能だった。だから小中高の修学旅行も夏休みの合宿も全部行くことが出来なかった。
止める家族に反発して市外に出たときは、いきなりダンプカーに跳ねられて危うく死ぬところだった。そんなこんなで九死に一生を得ることも少なくない。
しかも、岬だけがそう言う体質なのかと言えばそうでもなく、母方の女性もみんな市外に出るとろくなことがなかった。
祖母からは、鳥囲家の女は特別な力を持つのと引き換えに、土地から離れられないのだと聞かされてきた。祖母もその前の祖母、曾祖母から聞かされたと言っていたような。
とはいえ、市外に出られないという理由で就職から生き方まで左右されてしまうことが、岬の人生に対する不満だった。
「これじゃあ、一生ニートで実家暮らしじゃない!」
ぶつくさ呟きながら、足は公園へと向かっていった。
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