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声はカナリアそのものなのに、見たこともない濡羽色の美しい羽を持っている。小鳥はキョロキョロとせわしなく小首をかしげて驚いている岬を見つめた。
見とれている岬の肩にぴょんと飛び乗ってきて、またぴょんと地面に降り立った。
ぴょんぴょん進みながら、振り向いて岬を見る姿が、まるで自分の後を付いてこいと言っているように思えて、思わず岬は立ち上がって小鳥の後を追った。
黒い小鳥に導かれて、今まで知らなかった横道へ何度も入っては出て、いつの間にか知らない場所へたどり着いた。二車線の道が左右に伸びている。
「こんな所あったっけ?」
小鳥は道路を飛び越え、向こう側の柵に留まってこっちを見ている。まるで「こいよ」と誘われてるみたいだ。
岬は左右に注意して道路を渡り、小鳥の側へ寄っていった。人慣れしているのか、小鳥は逃げもせず、綺麗な声でさえずり始めた。
しばらく聞き入っていたけれど、ふと壁に目をやると、張り紙が貼ってある。張り紙には、「正社員募集! 未経験者歓迎! メモリアル田貫 電話番号〇九二−○○○−○○○○ すぐそこ」とあった。
「正社員……メモリアルってことは葬儀社?」
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