19人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「いやさ、こんな小さなラーメン二つだけ作るのも大変だからさ。和美ちゃんが来てくれる様になって、助かってんだ。色んなメニュー注文してくれるだろ? それに併せて、一緒に作ってるってわけさ」
和美は必死で美味しそうな顔を作った。ニコニコしながら、夢中で麺を啜る。スープを飲むと、大袈裟に口元を緩ませた。
至福の表情って、どんなんだっけ?
必死に笑顔を取り繕うのに、黄昏色のスープに目から溢れた透明な滴が溶けていく──。
あれ? 今日の味噌ラーメンは、しょっぱい気がする。こんなに美味しいラーメン、涙が止まらない。大将、やっぱりこれは世界一の味噌ラーメンです……。
「旨いかい?」
「はい、世界一の味噌ラーメンです!」
大将に目をやると、ミニラーメンのスープにも、大将の目から溢れた滴が落ちて行く。
それを見つめる様に、写真の中の奥さんと子供は満面の笑みを浮かべていた。
「今日の味噌ラーメンは、しょっぱいわね」
「うん、でもやっぱり世界一の味噌ラーメンだ!」
それはまるで、そんな家族の大切な時間の会話が聞こえて来る様だった。
最初のコメントを投稿しよう!