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黄昏色のスープ
店内には和美しか居なかった。その為ラーメンはあっという間にその姿を現した。
スープはまるで、黄昏色の様な、独特の色のスープだ。半熟玉子は夕陽の様に美しく、細く白いネギは飛行機雲の様に線を描いている。
それはノスタルジー。秋のスペクタクル。
……これだ。こんなにワクワクするのは、いつ以来だろう。
「いただきます……」
まずはスープだ。黄昏色のスープを掬ったレンゲにくちづけをすると、舌先に熱く滑らかな液体が絡み付いて来る。
一口含むと、体に衝撃が走った。口内の粘液が一斉に噴き出した。
これは……。
日本語は難しい。それは、一つの事象に対して多岐に渡る表現が存在するからだ。素晴らしい味に遭遇した時、日本人は様々な言葉の中から、『最適な答え』を探し出す。
しかし……。
「美味しい」「旨い」を始め、「ほっぺが落ちる」「舌がとろける」など、そこには表現の自由が保証されている限り、『最適な答え』は存在しない。
この度の和美は味噌ラーメンを一口含むと、その味をこう表現した。
──出来る。
出来る味噌ラーメンだ。これは、最上級に値する。
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