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私は、なんて自分勝手な生き物なんだろう。そう思いながらも、電話をかける指はとまらなかった。
「ユキノさん。お願いがあります」
「なあに? もう、お金がほしいの? お義父さんのお金、使い終わっちゃったとか?」
電話の向こうで、ユキノが微笑むのがわかった。
今、すごく、ユキノに会いたい。
忘れられないのなら、忘れさせてほしい。何もかも.......。
「ユキノさんに、話があります。今日、会ってくれませんか?」
「あら? ユリコからのお誘いなんて、珍しいわね?」
ユキノの声に、微かだが、動揺が混じる。優しい彼女の事だ。私の身を案じているのだろう。
「会って、くれますか? どうしても、ユキノさんに会いたいんです」
私は、ずるい。弱さを見せれば、優しい彼女は会いに来てくれる。弱った私を放っておけるような人じゃないから。
「場所は、いつもの?」
はいとだけ返事を返す。ユキノはすぐに、来てくれるだろう。ここからどんな遠い所にいても、必ず。それだけは、ハッキリと分かった。
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