過去

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 母からの電話があった、次の日。  母の代理人を名乗る弁護士から、連絡がきた。私の受け取り分を渡したいと。 「受け取り分.......ですか?」 「はい。亡くなられた、お父様の生命保険金です」  亡くなった、お父様.......? 「あなたとお父様は、養子縁組をしておりました。あなたのお母様は、娘であるあなたにも、相続の権利があると.......」 つまり、手切れ金と言うわけだ。それもよりによって、私が殺した男の生命保険金を使って。  後日、弁護士に会い、手続きを済ませた。手渡されたのは、一千万円。  いっせんまんえん。そう、自分の人生に値段をつけられた気分。  あの男は、私を弄んで穢し、私の人生を奪った。そして死んでもなお、私に付きまとい、私を苦しめるのだ。金に姿形を変えて。  そう思うと、この金が、憎くて、憎くて、仕方がない。欲しい時には手に入らず、もう後戻り出来ない今になって、こんな形で、転がり込んでくるなんて。  この金があれば、私は.......。 「あんな事、しなかったのに.......!」  ユキノとの間に肉体的な繋がりがないとはいえ、身を売った過去は変えられない。  男を軽蔑しながらも、男に媚びなければ、今の生活さえ送れなかった。  札束を握りしめ、バッグにねじ込む。この金をどうやって散財してやろうか。私は、思考を巡らせた。
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