21人が本棚に入れています
本棚に追加
母からの電話があった、次の日。
母の代理人を名乗る弁護士から、連絡がきた。私の受け取り分を渡したいと。
「受け取り分.......ですか?」
「はい。亡くなられた、お父様の生命保険金です」
亡くなった、お父様.......?
「あなたとお父様は、養子縁組をしておりました。あなたのお母様は、娘であるあなたにも、相続の権利があると.......」
つまり、手切れ金と言うわけだ。それもよりによって、私が殺した男の生命保険金を使って。
後日、弁護士に会い、手続きを済ませた。手渡されたのは、一千万円。
いっせんまんえん。そう、自分の人生に値段をつけられた気分。
あの男は、私を弄んで穢し、私の人生を奪った。そして死んでもなお、私に付きまとい、私を苦しめるのだ。金に姿形を変えて。
そう思うと、この金が、憎くて、憎くて、仕方がない。欲しい時には手に入らず、もう後戻り出来ない今になって、こんな形で、転がり込んでくるなんて。
この金があれば、私は.......。
「あんな事、しなかったのに.......!」
ユキノとの間に肉体的な繋がりがないとはいえ、身を売った過去は変えられない。
男を軽蔑しながらも、男に媚びなければ、今の生活さえ送れなかった。
札束を握りしめ、バッグにねじ込む。この金をどうやって散財してやろうか。私は、思考を巡らせた。
最初のコメントを投稿しよう!