出会い

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出会い

「いらっしゃいませ」  店に入ると、黒服の男たちが頭を下げてきた。店の内装は、色は違うものの、キャバクラと大きな差はない。店内を見渡していると、若い男が駆けつけてきた。 「ご新規さまですか?」 「はい」 「では、中へご案内します」  あの男の生命保険金の入ったバッグを握りしめ、男の後をついて行く。新しい物は買わず、いつもと同じ安物のドレスを着てきた。  紹介されたのは、私とさほど歳の変わらぬ男。お世辞にも、人気のあるタイプではない。 「はじめまして。シンです」  安物の服を身にまとった(きゃく)につくのは、売れない下っ端。この男も、きっとそうだろう。物足りない。わたしの気晴らしをするには……。 「ええ!? そうなの!!」  女のように、甲高い声を上げる男。そして、その隣には、うるさいくらいに、貴金属を身につけた派手な女。  がいい。  頂点(てっぺん)から奈落の底へと引きずり込む。それが、この汚れた金の使い道に、もっとも相応しい。  そんなことを考えながら、まずは一番安いボトルをキープする。ボトルをキープするのは、次も来るという証。  安物とはいえ、売上が入った事に安堵したのこ、目の前の男は自分の身の上を語り始めた。男はシンと名乗った。そして今、この世界ではよくある不幸話をしている。  話が終わると私は「大変だったわね?」と声をかけた。この世界にいる人間は皆、不幸で、大変な思いをしながら生きているのだ。
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