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父は突然、私に襲いかかって来た。その時の、父の顔。父親から、男へと変貌したその顔を。
私は一生、忘れる事はないだろう。
「やめてよ! 何するの!?」
突然の出来事に戸惑いながらも、必死で声を荒らげる。
「お前だってもう、子どもじゃないんだ。男と密室で二人きり。この意味が、わかるだろう?」
両腕を掴まれ、そのまま床に押し倒された。私の上に、父は馬乗りになる。大の大人一人分の体重とは、なんと重いのだろう。
ずっしりした重みと、この後起こるであろう事態から何とか逃げようと、バタバタと手足を振り回した。
すると父は、私の前髪を掴み、強く床に叩きつけた。
「きゃあ!」
衝撃で目の前に火花が散り、視界がぼやける。頭がクラクラして、意識が飛びそうになった。
「どうした? なぜ抵抗する。お前の大好きなお父さんが、可愛がってやろうとしているのに……」
耳元で囁く声はもう、私の知る父の声ではなかった。
「……違う。お父さんなら、こんなこと、しない……」
私の知る父は、こんな事をしない人だった。
友達の語る父親の話を聞きながら、自分が義理の父に本当の娘のように愛されていると何度思った事だろう?
だけど、それを。その思いを。当の本人に、かき消されてしまうなんて.......。
「ああ、そうだな?」
父が耳元で囁く。冷たい声で。
「俺だって、娘にはこんなことしないさ。血の繋がりがあれば、な?」
父が荒々しく首を掴む。このままでは殺されてしまうのではと思うと、恐怖で体が震え、動けなくなった。
そして、ぬるりとした感触が首すじに触れる。父の舌が触れたことに気付くと、思わず悲鳴がもれた。
「嫌っ」と言葉にすると、もう一度頭を床に叩きつけられた。
「なにを今更……! 普段から、お父さんお父さんと、何でも俺に相談してきたじゃないか?」
(それは……まだ、あなたを父親だと思っていたから……)
口の中を切ったのか、閉じることのできない口の端から、血の混じった唾液が、ダラダラとこぼれ落ちる。
抵抗できなくなった私の喉元を父は右手で床に押さえつけた。そして左手を伸ばし、服を脱がせようとする。
「あっ……やめ……」
「いっちょ前に、大人になったなぁ? 体つきは……」
目の前に伸びた左腕に噛みついてやりたかったけれど、体は言うことを聞いてくれない。
汗ばんだ男の手が腹を這い、胸のふくらみを支える布の上に届く。下着の中にすべり込む手は、ナメクジのようで気持ちが悪かった。
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