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そして体を床に押し付けられたまま、大きく熱い手で、体をまさぐられる。かつて頭を撫でてくれた優しい手は、獣のように荒々しい。
父は、散々私の体を触った後、今度はスカートを捲りあげて、下着を剥ぎ取った。
「へっ! ガキのくせに、色気づいた下着をつけて」
「……っ!」
恐怖と羞恥心が、ない混ぜになった感情で、呼吸の仕方が分からなる。今、自分の身に起こることが理解できず、苦しくて苦しくて、鼻と口からゼェゼェと酸素を吸い込んだ。
そんな私の姿に何か勘違いしたのか、父は下品な笑い声をあげ、太ももに舌を這わせた。
昨日まで仲良くお喋りしていた口が、同じ料理を味わった舌が、私の下腹部に触れる。熱い鍋に触れた時のような、皮膚の焼ける感触に、私は声にならない叫びを上げた。
見知ったはずの父親が。
お父さんと呼んでいた、その人が。
見知らぬ誰かに変わっていく……。
慕っていた人間が、人の皮を被った獣だと、誰が思うだろう?
このまま殺されてしまうのではと、恐ろしくなって、涙が止まらない。でも一番、恐ろしかったのは。こんな時でさえ、生きる事を願っている自分自身。
だから、仕方がなかった。自分が生きる事を正当化する為に、父を生かしておけない。私は、そう考えた。
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