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寂しい時間
私は夕方があまり好きじゃない。
私には素敵な家族もいるし、友達もいる。
夕方は家に帰る時間で、友達と遊んでいても帰らないとならない。それで夕方があまり好きじゃないのもある。
もちろん帰れば大好きな家族が私を迎えてくれる。でも……
「もう下校の時間だから、帰りなさい」
先生はいつもこの時間にこう言う。
担任の矢笠先生。今年先生になったばかりの若い男の先生。
私は先生のことが大好きで、それはみんなの「好き」とは違う「好き」だ。
だけどこんなこと、友達にも家族にも言えない。私の秘めた気持ち。
私は先生とお話ししたくて、勉強の分からない所を聞いたり、色々話しかけたりした。
悩みも先生に相談した。
とにかく気を引きたくて。
だけど先生はいつも下校の時刻になると、もう帰るように言ってくる。
だから寂しい。
昼と夜の間の時間は、先生とお別れしなければならない。
だから寂しい。
下校の音楽も夕暮れも、私にとっては寂しいものだった。
きっと先生は私の気持ちなんか知らないし、知っても答えてくれない。
私も早く、大人になりたい。
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