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「長老様、ただいま戻りました。」
村の家は藁で編んだ、円形の造りで、中央に薪を燃やす囲炉裏があり、それをかこむように、みんなで座ったり眠ったりできるよう藁が敷き詰めてあった。長老は目をつぶったまま女の問いかけに答えようとはしない。もう何日もこうして眠ったままだ。時々ひどい咳をして、寝返りをうっている。
家の外で料理をしていた長老の娘が、女に気づくと、手を止めて女に挨拶をしてきた。
「アンジェリカ、何日も戻ってこないから心配したのよ。」
アンジェリカそれが女の名だ。
「ごめんなさい心配かけて。結局何も捕まえられなかったわ。」
「いいのよあなたさえ無事なら。森の女神様があなたを守ってくれたのよ。」
「明日は川で魚をとってみるわ。森の女神様にもお供えしなくちゃ。」
長老の娘はそれを聞くと困ったような顔をして
「ごめんなさい、お父様の薬が切れてしまったのよ。明日城下町に行ってくれない? あなたに薬を買ってきて欲しいのよ。」
「わかったわ。明日行ってくるわね。」
「あなたばかり危険な目に合わせてごめんなさい。くれぐれも気をつけてね。」
「大丈夫よ。長老様の事は頼んだわ。」
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