※ 拐われた人形候補、悪魔さんとのはじめて

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※ 拐われた人形候補、悪魔さんとのはじめて

いつもぼんやりしている私は、生きているとは言えないかもしれない。 嬉しいとか怒るとかが基本的に無い気がするし、悲しくて泣くこともあまり無い。 あまり表情が変わらないらしく、人形みたいだとよく言われる。 「ごめんね、また今度ね?」 「うん…バイバイ…」 いつも一人で帰る帰り道。 友達もあまり多くないし、みんな忙しいから仕方がない。 ぼ〜っとしたままいつものように帰り道を歩いていると、ビュッッと風が吹いて急に私の身体が宙に浮いた。 「えっ…」 反応が遅い私は、自分に何が起きたか一瞬分からなかった。 「軽いヤツ。」 なんか、誰かに抱き抱えられているみたい。 そのうえ、その誰かが何かを言った。 強い風が吹いているから私は目を開けていられないし、無理やり目を開けても下を向いているから何も見えない。 「え…!?」 「体も軽いし感情も薄い、ってか〜。」 なんだか明るくて、楽しそうにしている声。 「あ、あの…降ろしてくださ…」 「そうだな。」 そう言われ、いきなりピタッ、っと体が止まったその直後、手が離されたらしく私の体は宙を舞った。 「きゃああ…!」 私の体は下に向かって落ちていっているようだった。 落ちてる…!私…痛いのは、嫌…… そう思った瞬間、また誰かの腕が、私の体を捕まえた。 それから悪気の無い感じの笑い声がする。 「バカだな〜、誰が簡単に殺すか。せっかく手に入れた魂の軽い娘!」 「あ…」 風はあまり当たらなくなったけれど、あまりの恐怖に目に涙が溜まって、未だに相手の顔はよく見えていない。 「流石に涙目か〜、まあいいや。さて、まずどの姿に決めるか、迷うな〜。」 「あ、あの…」 「…とりあえず連れていくか…。どうせ暴れたりしないだろ。」 私はようやく開けられるようになった目で、自分を空から落とし、そのまま拾い直したその相手を見た。 黒というよりもう闇に近い色の髪に、赤い目をした、黒くて角ばった翼の生えた若い男の人だった。黒っぽいワイシャツに、黒のジーンズを履いている。 その人が嬉しそうに笑って、私を抱き抱えたまま空を飛んでいる。 「…。」 「楽でいいな!暴れないし叫ばないし、人形にはちょうどいい。前の人間より魂が抜きやすそうだ!あれは出来ずに終わったからな〜。」 「…魂…人形…」 空も飛んでいるし、この人は人間ではないみたい。それに、魂を抜くってことは、私はこの人に殺されちゃうってこと…? 人形に、って言っていた… 「…。」 空を飛んでいる実感と、本当にそうされるかもしれない恐怖で、今度は血の気が引いて声も出なかった。
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