着せ替え少女の食事の支度

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「出来たぞ〜!…ま、こんなもんだろ…」 「え……」 しばらくして彼の持ってきたものは、料理とは到底程遠い見た目の物だった。 野菜がザクザク適当に刻んであって、ニンジンみたいな野菜もキノコ類もほとんど生のままみたいで、よくわからない香りのタレがかかっているし… 「…あの……」 「あ〜…まあ、食えるなら食えよ。」 彼は頭を掻きながら苦笑した。 「……わ、私…作れます…材料あるなら……」 私が恐る恐るそう言うと、彼は目の色を変えた。 「お〜!!俺は人間の食事は作れないんだよな〜…なかなか美味いからさ、人間のフリして店に行って食ったことはあるんだけどな!」 この人、人間のお店に行ったんだ、と私はぼんやりそう思った。 楽しそうにする彼に背中を押されてキッチンに来ると、いろんな物が散らばって荒れていた。 「……。」 私はまずは少しずつ、キッチンを片付け始めた。 「悪い…苦手なんだよな、ここの片付け。人間のフリして買い物するのは好きだから、まあここにはいろんな物があるんだけどな…。」 彼はそう言いながら、部屋の隅で私の片付けと料理をずっと見ている。 「…あの…この服……」 「ん?かわいいだろ?ホントに似合うな、お前!」 楽しそうに笑っている。 「あの…動きづらいんです……着替えちゃ…ダメ、ですか……?」 私がそう言った途端、彼の笑顔は凍りついた。 「……。」 「え…あの……」 すると突然、閃いたように彼は言った。 「…あ!エプロンだけする、っての、あっただろ!服着ないでさ…!」 「……これ、着てます……」 「…。」 私は、エプロンだけなのは恥ずかしいし寒いかもしれないと思ったので、着替えを諦めた。 「…まあいいや。次はメイド服にするか!宿とかにいる、仲居、ってのみたいなのも似合うかもな…」 この人、そんなのどこで覚えるんだろう…? 「こうなりゃ毎日着せ替えるか!抱いた後でな!」 「え……」 思わず彼に向かって振り向いた。 「…ゴスロリメイドがまずだな…!そんなの抱いたらくせになりそうだけど!」 彼はまた屈託なく笑った。 「美味そう!!」 私の作ったものを見て、彼が言った。 「あの…どうぞ…。」 私はポトフとサラダをお皿に分けて、彼に差し出した。 「いいのか!?…って、お前は食うんだよ!もとはお前の食事を出すはずだったんだからな!自分の分も取らないで…ホントにメイドになりに来たのかよ、お前…」 「あ……」 うっかりしてた…。でも、私をさらったの、この人なのに… 「ホントにぼんやりだな!」 また笑った。 こんなに笑う人、初めて…人、では無いみたいだけど… 「そういやさあ、お前、俺を怖がらないのな!さすが魂が軽いだけのことはある!」 「…?なぜ怖いの…?」 彼は私の料理を食べながら不思議そうに続けた。 「ん?空は飛べる、魂は奪えるんだぞ?他にも一応、魔力で出来ることはある!…少しは、な…?普通、人間は怖がらないか??」 「……。」 私は少し考えてみたけれど、やっぱりこの人を怖くは感じなかった。 「だって、周りの人の誰より楽しそうに笑うもの……」 「なんだそれ!」 彼は本当に楽しそうに笑う人だと私は思った。
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