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「えっと、二人は昔からの知り合いってことですかね」
「あぁ。俺は百さんと一ノ瀬さんと同じ大学出身で仲良くしてもらっている。円は中学生でな、すごくかわいかった」
「俺らのことはどうでもいいでしょうっ。俺、戻ります」
ツンと顔を背けてデスクへと戻っていく。
「今日もつれないなアイツは」
冷たくされても口元がにやにやとしている。
「十和田さん」
「万丈、お前なら一ノ瀬さんの良さを解ってもらえると思ってたんだよな」
あの日、一ノ瀬を万丈に任せたのはそういうことなのだろう。
理由は五十嵐と同じ。一ノ瀬を思ってしたことだ。
「俺が悪い奴だったらどうするんです?」
「お前はそんな奴じゃないよ。俺は人を見る目はあるんだ。だから間違いない」
肩をぽんと叩き、そして自動販売機でブラックコーヒーとカフェオレを買う。
「お先」
「はい」
一つは自分に、そしてもう一つは飲み物を買わずに戻った五十嵐に渡すのだろう。
「はぁ、俺も二人のようになれるかな」
従兄弟とか、高校の後輩だとかそういうのはなく上司と部下だった。それ以外のつながりが欲しい。仕事以外で、だ。
「行動あるのみか」
おかずを詰め込んだタッパー。それは一ノ瀬がくれたきっかけだ。
返すという目的がある。そして手料理のお礼をしたい。
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