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「あ……、ところで、その袋は?」
話を誤魔化そうと、万丈の傍にある紙袋を指さした。
「そうでした! 課長、おかず美味しかったですありがとうございました。あの、これは可愛い食器を見つけたので」
渡した食器を見て目を輝かせる。本当に嬉しんだと伝わってきて万丈も嬉しかった。
「可愛いな、これ。五色あるんだ」
「はい。後は箸置きとランチョンマットです」
一つずつ手に取っては嬉しそうに口元を綻ばす。
プレゼントは大成功のようでホッと胸をなでおろした。
「実はな、こういうのもあるんだ」
戸棚から取り出したのは黄色のお皿で、くちばしの部分が出っ張っている。
「ひよこですね。可愛い」
「百……、五十嵐副社長の子供たちにおやつを出すときに使っているんだ」
ひよこの型で抜いて、レモンのアイシングクッキーにするそうだ。
「先輩が見た子供とは五十嵐副社長の子供さんだったんですね」
「そうだ。買い物に付き合わされるんだ」
「なるほど」
そういうことなのかとホッとして、それに驚いた。どうしてそう思ったのかと。
「……作るか?」
「はい、なんでしょう」
気がそれていて話を聞いていなかった。
「クッキー、一緒に作るかと聞いたんだ」
眉間にしわが寄る。これは話を聞いていなかった自分が悪い。
「はい、ぜひ、ご指導のほどよろしくお願いします」
そして深く頭を下げると、小さくクスッと笑い声が聞こえた。
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