気づいてはいけない想い

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気づいてはいけない想い

 映画とクッキーを堪能し、一ノ瀬が夕食の準備をするためにキッチンへと向かった。万丈も立ち上がりそのあとに続く。 「手伝いますよ」 「いや、座って待っていてくれ。出来上がってからのお楽しみだ」  唇に人差し指をあてる。年上の男だというのに妙に可愛い。  それなら万丈は楽しみに待つだけだ。 「わかりました」  実は料理をしているときの一ノ瀬を見るのが好きだったりする。手際が良いし楽しそうだから。  フライパンからいい匂いがしてきた。  クッキーはほぼ万丈が食べてしまったのに、においに誘われ胃袋が切ない音を立てた。 「ふふ、もう少しだから」  その音は一ノ瀬にまで届いていたようだ。 「お恥ずかしい限りで」  お腹をさすりながら照れ笑いを浮かべる。 「いや。よし、出来上がった」  棚からどんぶりが二つ。 「丼ものですか!」 「そうだ」  なに丼だろうと期待が膨らむ。 「お待ちどうさま」  定食盆の上にどんぶり、漬物、お味噌汁がのっている。
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