130人が本棚に入れています
本棚に追加
気づいてはいけない想い
映画とクッキーを堪能し、一ノ瀬が夕食の準備をするためにキッチンへと向かった。万丈も立ち上がりそのあとに続く。
「手伝いますよ」
「いや、座って待っていてくれ。出来上がってからのお楽しみだ」
唇に人差し指をあてる。年上の男だというのに妙に可愛い。
それなら万丈は楽しみに待つだけだ。
「わかりました」
実は料理をしているときの一ノ瀬を見るのが好きだったりする。手際が良いし楽しそうだから。
フライパンからいい匂いがしてきた。
クッキーはほぼ万丈が食べてしまったのに、においに誘われ胃袋が切ない音を立てた。
「ふふ、もう少しだから」
その音は一ノ瀬にまで届いていたようだ。
「お恥ずかしい限りで」
お腹をさすりながら照れ笑いを浮かべる。
「いや。よし、出来上がった」
棚からどんぶりが二つ。
「丼ものですか!」
「そうだ」
なに丼だろうと期待が膨らむ。
「お待ちどうさま」
定食盆の上にどんぶり、漬物、お味噌汁がのっている。
最初のコメントを投稿しよう!