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飲み会の席。ハーレムを横目に静かに酒を飲む。
同じ課のモテ男である十和田と、別の課の王子こと千坂の周りを女子が囲んでいた。
女子と一緒に飲みたい男どもがちゃっかり加わって盛り上がっていた。
そこから非難するように百川と五十嵐が自分たちの席に加わって、すごいねと言いながら酒を飲んでいたのだが、酔った千坂を送るために百川が帰り、一ノ瀬の隣に座ろうとしたところに十和田が五十嵐をさらっていった。
去り際に、十和田から一ノ瀬のことを頼むと言われたので、なぜだろうと思いつつも席を移動せずに隣で飲んで食べている。
そこに女子がコーラですとコップを置いていった。
甘い炭酸水だ。食事と合わなそうだなと思いながら眺めていると、何も言わずにそれを手にした。
「一ノ瀬課長ってジュース類を飲むんですね」
飲み物はお茶か水、そんなイメージゆえについ口に出てしまった。
勝手な思い込みを口にするものではない。すぐに謝るが、
「……別に、嫌いじゃない」
そういうと眉間にしわが寄る。
気まずくてうつむくと、残り少なくなったグラスが目に入り、好きだったのかとそっと彼を見る。
するとなぜか顔が真っ赤になっていていた。
「一ノ瀬課長?」
まさかとその残りを口にする。
「これ、コークハイだ」
ウィスキーとコーラを割ったもの。酒が苦手だというのは酔いやすいからなのだろう。
「大丈夫ですか」
「……ん、あぁ」
ぼんやりとしている。普段の一ノ瀬ではありえない姿だ。
「トイレに行ってくる」
「え、課長っ」
いきなり立ち上がり、そして、よろめいた。
「わー、まって、俺も行きます」
足にきているようだ。このままだと転ぶのではないかと心配になり席を立つ。
「一緒にトイレって、子供みたいだな」
と頭を撫でられた。
「へ」
なんたる不意打ち。固まる万丈を無視し、一ノ瀬はトイレのある場所とは別の方へと歩いていく。
「まって、そっちは外ですから」
我に返り一ノ瀬の腕をつかみトイレへと向かうが、これ以上は飲ませないほうがよいかもしれない。
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