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今日の出来事で、一ノ瀬を見る目がかわった。
「一ノ瀬課長がこんなに癒し系な人だったなんて」
「会社での俺は怖いか」
本人も気が付いているのか、それなら誤魔化すこともせずに素直に話そうと思いうなずいた。
「いつも眉間にしわが寄ってますよね」
「こんな趣味があるから、子供のころはからかわれたものだ。それからうまく人と接することができなくてな」
人と目が合うと緊張して顔が強張るそうで、それが万丈や周りからは不機嫌そうに見えたわけだ。
「今は大丈夫みたいですね」
「あぁ。お前が引かずにいてくれたからだ」
照れる姿に胸がきゅんとした。
「えっ」
今のは何? 俺は胸に手を置いた。
「どうした」
「いえ。あの、俺帰りますね」
多分、酒が残っているせい。家で休めばよくなるだろう。
お暇しようと思ったのに腕をつかまれ引きとめられてしまう。
「え、一ノ瀬課長!?」
「朝食、一緒にどうだ」
どこかへ食べに行こうと誘っているのだろうか。
腹も減っていることだし、一緒に食事をしてそのまま帰ろう。
「はい」
「すぐに用意する」
「え、一ノ瀬課長が作るんですか」
「あぁ。一人だし、できるようになった」
キッチン対面のカウンターには椅子があり、そこに座るように言われて腰を下ろす。
「彼女さんと話をしながら料理をするとか、いいですねぇ」
まさに今のようにだ。万丈もいつか彼女ができたらこうやって過ごしてみたい。
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