闇の小道

　夏の暑さが終わり、乾いた風が吹き始めた夕暮れ、私は仕事の帰りに街外れの小高い丘に向かって歩いた。

　夕暮れ時になると、その丘は夕陽を遮り、丘の影に入った街は夕焼けた空の色に覆われる。

　その丘に向かう途中には森がある。

　鬱蒼と木々が生い茂り、そこを抜ける小道は木のトンネルに覆われて昼でも薄暗い。

　そしてこの時間になると、すっかり夜の気配に包まれる。

　振り返れば黄昏(たそがれ)て暗くなり始めた街が見え、木のトンネルの先には陽を浴びてまだ昼の明るさの残る丘が見える。

　夕暮れと昼の間に、夜がある。

　時の流れが歪んでいるから、夕暮れ時に森の小道から外れてはいけない。戻ることの出来ない闇に飲み込まれる。

　そんな言い伝えがこの街にはある。だからこの時間に小道を歩く者は居ない。私はひとり丘を目指して歩いていた。

　その時、森の奥深くにじっとこちらを見ている目があった。小道を外れ森の中に入り近付くとそれは昔の自分だった。私の胸は苦しく、そして痛くなった。

　このままではいけない。

　小道に戻ると、向かい側の森の中から誰かが現れた。