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『あんたなんか、大嫌い』
オレを睨み上げて、中指を突き立てた涙目の女。
大嫌いだった、オレだって。
なのに。
いつの間にか愛しく思えていたそのブサイクな泣き顔を誰かに見せたくなくて。
菜々を抱きよせていた。
「つまんねえんだよ、オマエがいないと」
明日っからどうしてくれんだよ、今までずっといたくせに。
突然現れて勝手にいなくなるなんて。
腹が立つ、むかつく、けど。
オレは、オマエのこと。
必死に伝えようと思えば思うほどその言葉が出てこなくて焦るオレに。
菜々がクスクスと笑い出した。
「周、寂しい? やっぱり私のこと好きでしょ?」
「!!!」
いともあっさりと言い出せなかった想いを勝手に代弁して。
泣き笑いしながらオレの顔を見上げた菜々は。
「好きだよ、周」
ふざけた顔して笑うから、オレも釣られて笑ってしまった。
ああ、もう最初から最後までオマエのペースに振り回されてるわ。
気付けば後ろにいたはずのヤツらの気配は消えていて。
ほんのちょっとホッとした、から。
「いなきゃつまんねえって思うぐらいには」
「ん?」
「多分、……好きだ」
「多分って、何よっ!!」
菜々がふくれて尖らした唇に。
笑いながら今度はオレから触れた。
笑いながら離れて3度目はまた菜々から。
「周!! まったねえ!!」
ゲートの向こう、飛び跳ねる菜々を笑って見送る。
次会う時までに、もっとマシな告白を考えておくわ。
来年の11月はまだ大分遠いけど。
隣にまた立てる日まで待つ、菜々がいい。
菜々の隣が居心地がいいから。
だけど、取り合えず今は。
「またな!!」
ボーイミーツガール【完】
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