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いつも通り放課後はアオイと二人教室を出て。
今日は練習来るんだろうか、そう気になった相手が。
昇降口でしゃがみこんでいた。
「何してんだよ?」
めちゃくちゃ小さく丸まってる背中に声をかけると。
「あ、待ってた」
とカラ元気を装い振り向いた海音。
何て顔してんだよ、全然大丈夫じゃねえや。
「オラ、行くぞ」
拓海は菜々ってやつと先に行ったのか?
行くぞと促したオレと。
「行くよ、海音ちゃん」
と海音の背中に手を回して一緒に歩きだすアオイ。
……、そういうとこ絶対敵わねえんだわ、アオイには。
バス停には先にあの二人がいて、オレらに気づいた瞬間。
あの女は最初に会った時のように拓海の後ろに隠れた。
まるで昨日オレを叩いた時みたいな睨むような顔ではなく。
何て言うか、そう猫を被った、取り繕った顔をして。
オレと何か話したこともない、みたいな顔をしていたから。
次会ったら謝ろうと思ってたオレも、どうしていいかわからずに目を反らす。
それからの日々、練習が終わるまで菜々は椅子に座りずっと拓海を待っていた。
今までなら少し雑談してから帰ってたけど居心地悪そうな顔をしている海音を見ていたら、とっとと帰る方がいい。
拓海の作った曲「Na na na」の歌詞の意味。
ごめんねとさよならをあの日の君に届けたくて 今唄うよ
ねえ どれだけ泣かせたのだろう?
幼かった僕ら 今ならできたことたくさんあるのに
消えてしまった君に
ごめんねとさよならと いつかまたね 君に届いてる?
拓海が誰に宛てたかなんて、わかった今。
海音はどんな想いで音を作ってるんだろうか。
ドラムの音が前よりも小さく項垂れて聞こえてるのはオレだけじゃないと思う。
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