少女、少年に興味を抱く

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「あーあ、ゴミ散らかしたの言いつけてやろ」  あちこちに散らばったそれを見て冷ややかに言い放つと。 「え? ヤバイ? 怒られる?」  菜々が焦り出した。 「言わねえよ、冗談だ。じゃあな、先帰るわ」  菜々に背を向け校門へと歩き出すと。 「待ってよ」  グイッとカバンの持ち手を引っ張られ、無理やり引き留められる。 「何?」 「今日って練習ないよね?」 「だから帰るんだろ」 「暇でしょ?」 「は?!」 「付き合って!! 行くよ、周!!」  今度はカバンを引っ張って歩き出す。 「ちょ、歩きずれえから離せって」 「離したら帰っちゃうでしょ」 「大体何でオレなんだよ、拓海かアオイでも誘えってば」 「いいじゃん、(あんた)が丁度いるんだし」 「まだ教室に誰か残ってんじゃねえの? 友達誘えよ」  菜々から無理に奪い取るように鞄の持ち手を引っ張って手を離させると。 「いないから言ってんじゃん」  オレを睨み上げながら頬をパンパンに膨らましたその顔には。 ―――河本さんってめっちゃ美人だよな  誰もがそう言って憧れていた面影なんか一切無くて。  その顔をこれ以上見ていたら噴き出しそうになるから、背中を向けて歩き出す。 「行くぞ! って、どこ行くんだよ」  瞬間オレに追いついて並んで歩きながら。 「いいの?! 付き合ってくれるの? 周」  ……友達いねえ、とか、言われたら仕方ねえだろ。 「さっき、私の顔見て笑ってなかった?」 「……笑ってねえ」 「ふ~ん? 気のせい?」  餌を頬張ったハムスターみたいな顔を思い出してまた笑いそうになる。
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