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どうしてコイツとカラオケになんかいるんだろう？
ボーカルの拓海、ベースでハモリのアオイの幼馴染であるこの菜々は。
どうして平然とオレの前でジャイアンリサイタルを開いているのだろう？
「周も歌ってってば！」
連続５曲歌ったあたりで不服そうにオレを見るけれど。
「言ったよな？ オレは歌わないって」
連れて来られたのはカラオケボックス。
―――それは、つい先程の話。
「日本の女子高生の放課後って、カラオケとか行くんでしょ、行ってみたいんだ！！」
多分オレの顔が歪んだのがわかったのだろう。
「嫌なの？！」
「嫌だな」
「なんで？！」
「なんでって」
「わかった！！音痴だからだ」
……多分、音痴ではないけれど、人前で歌うのは恥ずい。
「……そうだ、オレは音痴だ」
そう言っておけば諦めるかと思ったのに。
「じゃあ歌わなくてもいいから、付き合って！！ 私一回も入ったことないの！！」
今どきカラオケボックスに入ったことない女子高生、それが。
お願い、お願い、お願い、と手を合わせてきたら。
憐れすぎて渋々頷いてたってわけだ。
「ありがとう、周！ あ、でも、音痴って辛いよね」
最後の一言は余計。
そしてそれはそっくりそのまま返してやりたい、となったわけだ。
めちゃくちゃ下手くそだった、菜々の歌は。
全部英語の歌ばっかりで発音はめちゃくちゃいいのに音程は外れている。
でも楽しそうだから、ほっとくか、と放置してスマホを眺めてたら膨れている。
「周、何歌う？」
「歌わねえって言ったよな？」
「周の歌を聞かなきゃ帰れない！！ 絶対帰らない！！」
……コイツ、何なん？
―――秋山くんってかっこいいけど、怖いよね
遠巻きに女たちがそう言ってた。
確かに怖い顔をしているとは思う、だからまともに話をするのは海音ぐらいだったし。
海音ですらいまだに怖がる時もある。
「ねえ、何歌う？ どれにする？」
……、拓海、アオイ！！ コイツ、何なん？！
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