少女、少年に興味を抱く

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「拓海、定期入れ落とした」  年明け昇降口で靴を履く拓海のポケットから落ちたものを拾って手渡そうとして気付く。 「え、めっちゃいいじゃん、オレも買おうかな」  一見すると定期入れに見えるそれがピックケースで、中には何枚か拓海のピックが挟んである。  持ち運びにいいな、かっこいいし、とマジマジと眺めるオレの手からサッと奪い去り。  今度は落とさないように、胸の内ポケットにしまい込んだ。 「拓海、どこで買ったんだよ?」 「……わかんない」 「は?」 「貰ったから、海音、に」  あ、っと頭に浮かんだのはクリスマス、拓海の誕生日。  でも学校休みの日じゃん?  わざわざ、海音が拓海の家に行ったんだろうか?  オレが何を言いたいのか察したようで。 「アオイと一緒だったよ」  ……アオイと、誰が一緒?  首を傾げたオレに。 「デートの帰りに家に寄ってくれたみたい、渡しに」  呆然とするオレを置いて拓海は自分の教室へと歩いて行ってしまう。  アオイと海音?! なんで?! 拓海と海音じゃなくて?!  慌てて自分の教室に入ると、そこにはもうアオイとアオイの取り巻き女子が楽しそうに輪を作っている。  いつもと変わらない光景なのにさっきの拓海の爆弾のせいで。  その輪の中心にいる王子様然としたアオイの顔がいつもにも増して軽薄そうに見えてしまって。 「ちょ、そこオレの席。退いて」  取り巻きの一人が邪魔で座れずにいた自席の椅子をギイッと大きな音を立てて引いたら。 「きゃ、が怒ってらっしゃる~!」  ……は?! 何だ、それ?!  今喋ったヤツは誰だ?! と周りを見渡すと誰もオレと目を合わせないように俯いていて。 「周、おはよ! 皆怖がってるから睨むの止めなよ」  たった一人アオイだけがオレに笑いかけてくる。  カーテンから零れる冬空のほんの一瞬の光ですらアオイの味方なのか、ヤツを照らしていて。  確かにかっこいい、かっこいいけれど、周りに女をはべらし過ぎだ!!  海音、こんな男は止めておけ、まだ拓海の方がいい、!!  ……本当に海音はアオイとデートなんかしたんだろうか? 「周? オレ、何かしたっけ?」  いつの間にかアオイをじっと睨んでしまっていたらしく。  困ったような顔をしてるけれど。 「別に」  吐き捨てるように呟いてアオイから目を反らした。  完璧に八つ当たりなのはわかっている。
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