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「B組の転校生の名前がわかりました~!! ナナちゃんだって」
HR終了後1限目が始まるまでのほんの一瞬で隣のクラスの転校生情報を仕入れて来たバカが一人。
上機嫌で語尾まで上がってる。
「めっちゃハーフ美人、超可愛い!! 後でもう一回眺めに行こうっと」
その嬉しそうで頭の悪そうな台詞に、あきれるうちのクラスの女子たち。
反して我も我もと浮かれる野郎ども。
そんな浮き足立った様子にため息しか出ない。
アホくさ、わざわざ見に行くほどのもんじゃねえだろ、どうせいつか見かけるんだろうし。
猿並みの知性しかないのか、オマエらは! なあ、アオイ、と。
多分オレと同じように呆れてるだろう同志を求めて、アオイを振り返って見たら何やら浮かない顔をして。
A組とB組を隔てている壁をじっと見つめてる、オマエ透視でもしようとしてんの?
まさか、アオイがハーフ美人に興味があったりすんの?
まさか?! いや、ナイナイ!!
アオイに限ってそんなわけはない。
だってアイツが好きなのは、多分……。
なのに1時限目が終わって1番始めに教室を飛び出して行ったのがアオイで。
その後ですぐに。
「アオイがハーフ女子と親し気に話してたんだけど!!」
ヒステリックに泣き崩れたアオイの取り巻き女子たちの話が聞こえてきて。
B組の転校生とアオイとは何か関係があるのだ、と推測する。
現にその後オレのところに来て。
「周、ごめん。ちょっと今日用事があって。練習できないわ」
こんな風に練習ドタキャンなんてことは、今までになかったことだから。
アオイが普段と違う様子だってことくらい、オレにだって伝わってくる。
予定の無くなった放課後、トボトボと帰り道を歩く見慣れた小さな背中。
「どこ行くんだよ」
振り向いた海音の顔はいつ泣き出してもおかしくないほど心細そうで。
「周、……こそどこ行くの?」
「知らねえわ、トボトボ歩いてるヤツがいっから保護しに来た」
「何それ」
さびしそうな顔で微笑まえたら仕方ない。
そのまま、海へと連れ出した。
海音に泣かれるのだけは嫌なんだ。
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