恋をしたのは

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 菜々は本当に美味そうに、そして上品に食べる。  前に海音も言っていた。  一緒に蕎麦食べた時、すごく美味しそうにキレイな食べ方してたんだ、って。 「食べないの?」  ふとオレの視線に気づいた菜々が顔を上げたから慌ててまた食べ始めた。 「ねえ、美味しい?」 「美味いな」  結局菜々がチキンとベジタブルのスープカレーを選んだからオレは菜々の第二希望だったラムカレーを選んだのだけど。 「あーん」  スプーンにゴロッとしたラム肉乗せた瞬間、菜々が目の前で口を開けた。  まさか?! 「ラム食べたい、あーん」  嘘だろ、何で今?!  周りを見渡せばそういうことをしているカップルが目に入り頭が痛くなる。  なのにオレの頭にはあの言葉が浮かぶわけだ。 『……後、1ヶ月しかいられないんだ、日本には』  ああ、もう、ふざけんな!! 「んんん~!! 美味しすぎる~!! Yum-yum」  ラムの塊を菜々の口に放り込むようにして周りを確認する。  誰にも見られてませんように、と。  満面の笑みを浮かべた菜々はそれに気づかずヤムヤムうるさい。 「ああ、こっちも美味しかったね、でもチキン!! これもまた絶品なの!!」  ……、マジか。 「いらねえし」  目の前にチキンを乗せた菜々のスプーン。 「チキン苦手だった?」 「苦手じゃ」 「じゃあ、ハイ!! あーん」 『……後、1ヶ月しか……』  目を瞑って口を開けると舌の上に乗せられたチキン。 「うまっ」  思わず目を開けて漏れてしまったオレの声に気を良くした菜々が微笑んでいる。 「私さ、周と食べたこのスープカレー絶対忘れられないと思う、だって本当に美味しいんだもの」  その言葉に端っこに浮かぶ寂しさにオレが黙ってしまいそうになる手前で。 「また来ようね、来年」 「は?」 「多分、来年の11月くらいかなあ? 日本の大学受験しに帰国するからまた誘うね」  ね、と首を傾げて悪びれずに笑う菜々に本当に絶句した。
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