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絶対、行かねえ!!
行けるわけがない、どんな顔して行ったらいいんだよ、菜々の見送りなんか。
海音の再三の誘いのLINEにもNOのスタンプを返し続ける。
コンテストの帰り道皆で打ち上げにハンバーガー屋に寄りたいと言い出した菜々に。
「オレ疲れてるから帰るわ」
と、一人だけ先に逃げ出した。
「ちょ、周!!」
拓海の声が背中を追いかけて来たけれど早足で皆の元を立ち去った。
明後日、菜々が行ってしまう。
その事実から逃げ出した。
打ち上げなんか、アイツの送別会みたいになっちゃいそうで。
一夜明けて、今朝クラスで菜々の転校の話を担任がしていて。
ああ、やっぱ転校しちゃうんだな、と横目でアイツを見た。
元気でね、とかクラスのやつらに囲まれて。
だけど最後までそれに心を開かなかったアイツは曖昧に静かに微笑むだけ。
本当はそういうヤツじゃねえぞ?
猫被ってるだけだから、それ。
暴露してやりたい思いと。
本当に親しいヤツだけ知ってればいいか、という気持ちが交差する。
このクラスで知っているのはオレだけでいい、と。
何度も目があった、何か言いたそうなのはわかっていた。
だけどまたオレは菜々から逃げ出した。
「アオイ、ちょっと今日家の用事あってさ、」
菜々が日本にいられる最後の日にまで逃げ出した。
バイバイ、元気で、なんて。
言えねえし言われたくもねえよ。
またいつか、なんてまだまだ遠い先だし。
ずっと、一緒に居過ぎたから。
明日から居なくなるなんて認めたくなくて。
逃げてばかりいた。
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