恋をしたのは

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 発着ロビーにはたくさんの客がいて、パッと見この中から菜々を探すのは無理じゃないか、って思ったのに。  オレの目はすぐにアイツを探し出していた。  菜々と菜々の母親だろうか?  じっと見ていたらそれに気づいたのか。 「なんでえ、来なくていいって言ったのに~!!」  走ってくる菜々の顔が笑いながら歪む。 「寂しくなっちゃうじゃん」  泣きながら海音と抱き合っている。 「菜々ちゃん、約束、忘れてないからね!!3つとも守るよ」 「ありがと、海音ちゃん、また絶対会おうね」 「会おうね、じゃないよ、一緒の大学行くんでしょ」 「あ、そうだった」  いつの間にこの二人こんなに仲良くなってたんだろな?  そこにアオイも割って入って。   「菜々、たまにはオレにも連絡くれよ」 「え~、アオイと話すことあるかな? 海音ちゃんとならあるけど」  泣きながらもいつも通りの菜々の辛辣さにアオイは苦笑していた。  見守るように笑っている拓海を見た菜々は。 「拓海、負けるな~!!」 「何がだよ?」  おいおい、海音とアオイの前で滅多なこと言うなって。  拓海もわかっているのか困ったように笑っていて。  それから、菜々はやっとオレを見た。  だけど、何て声をかけたらいいのか。  やっぱり元気でな、とかまたな、とか別れの言葉はどうしても言いたくなくて。  考えていたオレに。 「周、ホラ、何か声かけてきなよ、しばらく会えないんだよ!!」  海音の声が聞こえたと同時にドンと菜々の前に押し出された。  何しやがんだよ! と振り返り海音を睨むと肩を竦めていて。  でも祈るような顔でオレを見ている。  ッチ、わかってんだよ、何のことかぐらい!!  目の前の菜々を見下ろせば、鼻も目も真っ赤。  鼻水を啜りあげながらオレを見上げてる。  ……、この顔見れるのも来年までねえのか。  そう思ったら寂しくなる。  こうなるから来たくなかった、だけど。 「……、帰ってきたら連絡寄こせ」  もう一度、菜々に会いたい。  だから必ず連絡寄こせ。  オレからの精一杯の想いをのせた、つもりだった。  なのに。 「やだよ」  は?!  やだ、って。  連絡寄こさないってことか?!  一瞬思考停止しかけたオレの耳に。 「帰ってきてからじゃヤダよ、ずっと連絡欲しいよ、周の声が聴きたいよ」  ボロボロと泣きながらめちゃくちゃブサイクな顔でオレを睨み上げてくる。
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