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それでもこうして三人で登校して、昼を食べて、用事がなければ下校も一緒にする。
仲のいいほうだろう。
二人ともいい友人だ。
多分、二人もそう思ってくれているはず。
けれど、俺は時折、二人の仲に入り込めない空気を感じてしまう。
桜庭が遠野に遠慮をしないところとか、遠野が桜庭に対してはそっけない態度をとるところとか。
二人とも、俺相手にはしない。
そんなことを寂しいと感じるなんて、子どもみたいで誰にも言えやしない。
「吉原!」
「え……何?」
「お前までぼんやりしてんなよ」
「あぁ、ごめん。ちょっと寝不足で」
「ゲームか?」
「お前じゃないんだから」
桜田の言葉に、遠野があきれた声を出す。
桜田はゲーマーだ。
スマホゲーとかじゃなくて、大会が開かれるようなゲームが好きらしい。
説明されてもよくわからなかったけれど。
「布団には入ってたよ。寝れなかっただけ」
「考え事か?悩み事とか……」
遠野が少し少し表情を変える。
心配してくれている表情だ。
「いや、大丈夫だよ。隣の部屋の姉貴がうるさかっただけだから」
別に姉貴の部屋から騒音は聞こえてきていなかったが、今回は犠牲になってもらおう。
姉貴は存在がうるさいし。
「なら、いいが」
「二限の現国で寝るわ」
だから心配するな、と笑う。
「で、何の話?」
「あぁ、あのな――」
桜田が話す内容に相槌を打つ。
――悩み事とか……。
そう言って心配そうにこちらを見る遠野の表情を思い出す。
――お前のことだよ。
なんて、言えるわけもない。
目の前を歩く二人を見つめる。
桜田の会話に、無表情に相槌を打つ遠野の姿。
俺の入り込めない二人の関係。
無表情だが、遠野が桜田のことを大事に思っているのは知っている。
桜田だって、そんな遠野を憎からず思っている。
だから、俺のこの想いは隠してしまっておかなければ。
遠野が好きだ。
無表情で、優しい遠野が好きだ。
一人で戸惑っていた春、俺に声をかけてくれた遠野。
何かと気にかけてフォローしてくれる、世話焼きな遠野。
無表情で誤解されて、そのことに落ち込んでいる遠野。
全部全部好きだ。
一年の終わりごろには自覚していた。
けれどその時には桜田のことを見ている遠野のことを知っていたから。
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