saisei

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 八時半に受付を済ませ、胸部レントゲン、心電図、心エコーが済んだのが十一時だったが、心エコーが終わると藤川は、その場で待つように言われて、数分後に救命救急センターの看護師が、車椅子を押して藤川を迎えに現れた。  救命救急センターでは七人程のスタッフが藤川を待ち構えており、全員が二十代から三十代の者達で構成されたチームだった。  シャツを脱ぎ、処置台に寝かされる。  スタッフの誰しもが、一瞬だけ意外そうな表情をしたが、予想出来た反応なので藤川が苦笑いを浮かべた。  若かりし頃、バンドをやっていた藤川の右腕と左胸にはタトゥーがある。それ自体は珍しくは無いが、胸のタトゥーの図柄が薔薇であり、スタッフ達の親世代の男の胸に薔薇はミスマッチでしか無い図柄だからだ。  主治医になるという中村が藤川に告げた。 「よく来てくれました。藤川さん、来てくれてありがとうございます。いつ心筋梗塞になっても不思議じゃない状態なので、今からカテーテル検査をして、そのまま処置することになります」  中村は三十代前半であろう男で、いわゆるイケメンな男だった。 「私達は全力で、何をやってでも藤川さんを助けますから!」そう中村が熱い口調で言い切った。  イケメン主治医と初々しい二名の研修医、的確な看護師……活気のある若者達に囲まれて、藤川はテレビドラマのような光景だと思いながら、準備をしている研修医に尋ねた。
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