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「何で来てくれてありがとうなの?」複数のスタッフが藤川に言った台詞だった。
「僕達の仕事は人の命を救う仕事です。だから患者さんが来てくれるのが遅くて、手遅れになるのは怖いし、もの凄く悔しくて悲しいんです」まだ子供っぽい研修医が、熱い眼差しで藤川を見つめながら言った。
「そうか……ありがとう。じゃあ、俺は間に合ってラッキーだね。命拾いしたよ」満面の笑みを浮かべて藤川が答えた。
一時間後、カテーテルによる手術が無事に済み、藤川はICUの一室に移動していたが、その部屋は藤川にとっては忘れることの出来ない部屋だった。
ここのスタッフ達も全員が若者で、彼は彼女が好きなのかな?と思われる二人の間に割って入る、俳優の妻夫木聡に似たスタッフ等、まさにテレビドラマの一場面のような世界で、子供の居ない藤川はその若いエネルギーに癒されていた。
「いやぁー、命拾いしちゃったよ。ありがとうございます」
今日、藤川は何度、この台詞を笑顔で口にしたのだろう。どのスタッフも嬉しそうだった。
夜間、藤川を担当してくれたのは、驚く程に白い肌の窪田と言う看護師だった。
「この薔薇、何歳の時に入れたんですか?」検温しながら窪田が尋ねた。
「二十歳くらいかな」
「色が褪せてなくて、綺麗ですね」
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