この夜を抜けたら

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 私がポテトケースの一番奥にあった、焦げてカリカリになった短いポテトを口に放り込むのと同時に「そろそろ行こうか」と優里が言うのも知っていた。不思議な感覚のまま優里と別れて家に帰る。きっと夢だ。優里が死ぬはずはない。  家に帰って夕食を済ませ、お風呂に入って寝る。いつも通り起きて高校に行き、変わらない日常を送る。  優里と会ってから三日後の夜、優里と同じ高校に通う共通の友人からメッセージが届いた。 ――驚くと思うけど落ち着いて聞いて。優里が亡くなりました。  そして私は葬儀場にいる。色とりどりの花が飾られた祭壇の真ん中で、遺影の優里は笑っている。  私の頭の中は、悲しみより疑問でいっぱいだった。何だこれは。一体何なんだ。  お焼香の順番が回ってきた。独特の香りがする小さな木の屑のようなものをつまみ上げると、やはり変な匂いがする。お焼香の匂いではない。温かさを感じる、馴染みのある匂い。油と塩の交じった匂い。  わかった。これはマックフライポテトの匂いだ。 「ポテトのMと、シェイクのチョコレートお願いします。藍は?」  目の前に優里がいる。遺影じゃない。生身の優里と一緒にマクドナルドにいる。 「藍、どうしたの?」
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