この夜を抜けたら

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 信じられないけど私は今、恐らくタイムリープをしている。優里の葬儀でお焼香をしようとすると、マクドナルドに戻ってくるのだ。優里と最後に会った駅前のマックに。  三回目となる優里の漫画の感想を聞く。男子高校生グループの馬鹿笑いの前には片耳を塞ぐ。ソフトツイストを持った小さな子どものお母さんに、大量の紙ナプキンを渡しに行く。  もしかしたら、今ここで私が優里に何か言えば、優里の自殺を止められるのではないか。そう思いついたとき、全身が熱くなった。  何を言えばいい? どうすれば、優里の自殺を止められる? 「命って大事だよね」唐突すぎるし白々しい。 「何か悩みはある?」推しキャラへの熱い語りの最中に突然切り出す話じゃない。  難しすぎる。でも何かしなければ、優里が死んでしまう。  もっと前の時間に戻れればいいのに。たとえば優里と同じ高校に行って、私がいじめから守るとか。いや、頭がいい優里が通っているのは県内トップクラスの進学校だ。そこに一緒に行くにはもっと前に戻らなければいけない。中学? それとも小学校?  考えるだけ無駄だ。私が戻れたのは、優里が亡くなる日の夕方なのだ。たった今何かしなければ、私はまた優里のお葬式に行く。
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