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「すみません、せっかくのお誘いですが……」
夜深は困ったように眉を寄せ、言いにくそうに口を開く。
明香と話しているためか、ソラに気付いていないようだ。
「そうですか。でも、気が変わったらいつでも声をかけてくださいね!」
残念そうに言いながらも、明香は笑顔だった。
話し終えたのか、夜深と別れてソラの横を通り過ぎていく。
彼女の横顔に懐かしさを感じながらも、ソラは夜深の元へ向かった。
「あ、おにい」
「並木先輩と話してたのか?」
「ああ、うん。この間から生徒会の活動に誘われてて……」
言いながら夜深は目を逸らす。
まるで後ろめたいことがあるようだった。
「でも、わたしは体調を崩しやすいから、断ったんだよ。生徒会長さんは諦めてないようだったけど」
夜深は喘息持ちのため、季節の変わり目や気温差ですぐに発作を起こしてしまう。
重症化して肺炎になることもあり、今までの学校生活にも支障が出ていた。
その経験から生徒会への参加を断ったらしい。
「夜深なら上手くこなせそうだけどな」
「それでも不安なんだよ」
二人は会話しながら昇降口を出た。
背後から見つめる視線に気づかず、帰路につく。
彼らの背中が遠ざかると、人影は校舎の奥へと消えていった。
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