第一章 七不思議のうわさ

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↓↑↓  午後7時、君島家の食卓に水守姉妹が揃った。  キッチンにいるソラは、ひたすらからあげを揚げている。  油切り用のバットには、揚がったからあげが積まれていく。  夏世は夕食ができるまでの間、宿題に取り掛かっていた。 「数学、ワカラナイ。何、コノ呪文」  三次式の因数分解で躓き、頭を抱えている。 「そもそも、因数分解ってなんだっけ」  問題を解く以前の問題だった。 「因数分解はね、1つの足し算や引き算が混ざっている式を、カッコでまとめて掛け算の式に変えることだよ。夏世ねえ、『展開』って覚えてる?」 「えっと、広げる的な意味?」 「うん……覚えてないんだね」  夜深は説明しようとして諦めたようだ。 「夏世ねえの場合、難しく考えると余計わからなくなるから、公式だけ覚えて当てはめて計算すればいいと思うよ」  そう言ってルーズリーフにスラスラと公式を書いていく。  最後に書いた式をマーカーで囲って「これを覚えて!」と夏世に渡した。 「夜深ちゃん、女神!」  一つ年下の妹に教わる姉――それが水守姉妹の日常だった。  教わった公式を使い、集中して問題を解いていく夏世。  彼女が宿題を終える頃、山盛りのからあげが出来上がっていた。 「おわったー! これでご飯が食べられる」  すぐにテーブルを片付けると、食卓にからあげをはじめとしたおかずが並ぶ。
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