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音楽室の人食いピアノ。
女子トイレに出る自殺した女子生徒の霊。
深夜の家庭科室で飛び回る九本の包丁。
プールに引きずり込む無数の手。
欠番――七つ目を知ったら死んでしまう。
内容はどれも『学校の怪談』として調べれば出てくるような噂ばかりだ。
「夜になると音楽室の肖像画の目が光るとか、理科室の人体模型が追いかけてくるとか、そんなのはないんだ?」
洗い物を終えた夏世がスマートフォンを覗き込んできた。
音楽室の噂は『人食いピアノ』となっているが、ベートーヴェンやモーツァルトの肖像画も不気味ではある。
「音楽室にまつわる噂が二つもあったらバランスが悪いからじゃないか?」
「でもさー、人食いピアノって言われてもピンとこないよ? 肖像画の目が光るほうが怖くない?」
それは人による……と言いたくなるのをソラは辛うじてこらえた。
人食いピアノの噂については『ピアノの音色で人を誘い、喰らう』という簡潔な文章で書かれている。
「これ、ひとりでにピアノが鳴り出すんじゃないかな?」
「あー、それならちょっと怖いかも」
夜深が噂の説明を読んで思ったことを口にすると、夏世は同意した。
「まあ、実際にあったとしてもただのイタズラじゃない? ピアノが勝手に鳴り出すわけがないし、今ならスマホとかで録音した音を流せるでしょ」
夜深は噂が事実なら、録音したピアノの音を利用したトリックなのではないかと考えたようだ。
「七不思議を意図的に流行らせようとした人のイタズラってこと?」
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