第一章 七不思議のうわさ

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「うん。でも、あくまでってことだよ。証拠は何もないし」  ソラと夜深が噂について考察しているうちに、夏世は次の噂を見ていた。 「トイレで自殺した子の幽霊が出るってどういうこと? 意味がわからないよ」  トイレで自殺という部分が謎だ。  夏世は、学校で自殺があったとしても、あえてトイレという場所を選ぶ意味がわからないと言いたかったらしい。 「そもそも、トイレどころか桜高で自殺があったなんて事実はないんだよ」 「え、どういうこと?」 「だから、桜高が創立してから今日まで自殺した人はいないの」  自殺者の霊が出るといううわさなのに自殺者がいない――つまり、根も葉もないうわさ話だということだ。 「じゃあ、このうわさは嘘ってこと?」 「あくまでうわさはうわさ……ってことだね」  夏世の疑問に夜深が答える。  夜深が考えたとおりなら、意図的に七不思議を流行らせようとした人間がいるはずだ。 「ただのオカルト好きさんのしわざかもしれないし、実害がないなら深く考えなくても良いんじゃないかな」  夜深はそう言って話を締めくくった。  ソラと夏世も頷き、会話が途切れる。 「宿題終わったし、ご飯も食べたし、片付けたし、そろそろ帰ろうかな。明日も朝練あるし」  少しの沈黙の後、夏世が切り出してお開きとなった。  水守姉妹は隣の自宅に帰り、ソラ一人になると七不思議のうわさを思い出してしまう。 「ただのうわさ、だよな……」  自殺や死を連想させるうわさばかりなのが気になったが、深く考えずに頭の片隅に追いやった。  
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