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「誰よ、あなた」
ボソリと呟くようにこぼれた声。
それは聞き覚えのある彼女の声なのだが、ソラは違和感を覚える。
いつもの明香は、明るくハキハキと喋るのだ。
しかし、今の彼女はまるで自分の声を聞かれたくないというようにボソボソと呟いている。
ソラは明香にまつわるうわさを思い出した。
生徒会長、並木明香は二重人格だといううわさ。
「あの……」
直接本人に聞いてみようとソラが口を開くと、中途半端に締めていたドアが勢いよく開かれた。
「お待たせ〜!」
ドアを壊しそうな勢いで開けて入ってきたのは、明香と瓜二つの少女。
彼女を見て固まってしまったソラ。
「あれ、君島ソラくん?」
形の良い唇から紡がれる鈴を転がすような声。
彼女こそ、ソラの知る並木明香だった。
「え、並木先輩? それじゃあ、こっちは?」
後から入ってきた明香とそっくりな少女に目を移す。
見れば見るほど、鏡にうつしたかのように同じ顔だ。
「あ、えっと……妹の彩香です。私たち、見ての通り一卵性双生児なんですよ」
二人並ぶと雰囲気の違いがよく分かる。
ニコニコと笑顔の明香と、ツンと視線を合わせようともしない彩香。
同じ顔なのに、やはり別人だ。
「ちなみに私はこの学校の生徒じゃないわ」
彩香がソラの疑問を先回りして答える。
だが、彼女は桜高の制服を着ていた。
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