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何かあったの? ――と視線で訴えてくる夜深に、ソラは明香のことを話すか迷った。
少し悩み、双子の妹・彩香のこととオタクであることは伏せて明香とのやり取りを伝える。
「生徒会長さんに告白したんじゃないんだ?」
「何でそうなるんだよ」
「だって、おにい、生徒会長さんみたいなタイプが好きでしょ。お淑やかで頭が良くて、何でもそつなくこなすタイプ」
夜深に言われてドキリとしたソラだが、その後に続いた言葉で我に返った。
直接話してみて、明香がイメージしていた人物とだいぶ違うことを知っているソラは頭を抱えたくなる。
「僕の好みは置いておいて、並木先輩はそんな完璧超人じゃないよ」
むしろ、隙がありすぎるくらいだとソラは思う。
双子の妹を代理出席させていることも、重度のゲーム、漫画オタクであることもバレていないのが不思議なくらいだ。
「ふぅん。生徒会長さんと仲良くなったんだね」
夜深はぼそりと呟くように言うと、教科書とノートを閉じた。
終わったのか、切り上げることにしたのか、勉強はやめることにしたらしい。
「夜深ちゃ〜ん!」
少しだけピリピリした雰囲気になったところに、夏世の情けない声が響く。
バタバタと足音を立てリビングにやってきた夏世は、化学の教科書を持っていた。
「明日ミニテストなのに元素記号が覚えられないんだよー」
泣きつく姉にため息を付き、夜深は手を伸ばして教科書を受け取る。
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