序章 天使様

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 彼女の目的は復讐だ。  自分をイジメている子たちを消し去りたいと強く願い、天使様とコンタクトを取った。 『あなたは普段通りの学校生活を送ってください。望み通り、彼女たちを学校から消してあげます』  抑揚のない声が受話器越しに響く。 「本当に、叶えてくれるのね?」 『ええ』 「あの子たちを一人残らず殺してくれるのね?」  天使様が『消す』とぼかして言ったが、レナは過激な言葉で返す。 「イジメられている私が疑われたりしない?」  何か事件があれば、真っ先に交友関係が疑われる。  イジメを受けていたと言う事実があるレナは真っ先に疑われてしまうだろう。 『ご心配なく。あなたが口外しなければ、無闇に疑われることはないでしょう』  掲示板でのやり取りは学校での愚痴ばかりだった。  直接のやり取りはスマートフォンではなく、公衆電話を使っている。  通信記録を調べられても、証拠にはならないからと天使様が提案したからだ。 「わかった。あなたを信じてみる」 『ありがとうございます。それでは、完了までお待ちください』  そう言って電話は切れた。  失敗してもレナに失うものはないし、成功したら安寧とした学校生活が戻ってくる。  レナという名前も本名ではないし、疑われたとしても白を切ってしまえばいい――そう考えた彼女は、足早に公衆電話をあとにした。
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