第一章 七不思議のうわさ

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第一章 七不思議のうわさ

 君島(きみじま)ソラの朝は早い。  5時には起き、朝食の準備を始める。  高校生である彼は、現在実家で一人暮らし。  母親は幼少の頃に亡くなり、父親は海外赴任中。  仕事で家をあけることの多い父のため、家事全般を請け負っていたため、炊事洗濯から掃除まで何でも一人でこなすことが出来る。  特別でも何でもない、どこにでもいる男子高校生だ。  ただ一つ、普通と違うのは隣に住む幼馴染みの分も食事を用意していること。  左隣の家に住むのは、同じ学校に通う水守(みもり)夏世(かよ)と水守夜深(よみ)の姉妹。  夏世はソラと同じ桜海(おうみ)学園高等学校に通う高校2年生で、中学校から5年連続でクラスまで一緒だ。  夜深は一つ年下だが、頭の回転が早い。  何故、水守姉妹の分の食事までソラが用意するのかというと、彼女たちもまた両親が不在だからだ。  その上、夏世も夜深も家事が壊滅的にできない。  小学校の時、家庭科の調理実習で味噌汁の鍋を爆発させた夏世を見て、彼女に料理させてはいけないとソラは思い知った。 「そろそろ来るか?」  時刻は6時半を過ぎていた。  ピンポーン――と、インターホンが鳴る。  同時にバタバタと足音が聞こえた。 「おっはよー」  元気な声がリビングダイニングに響く。  緩くウェーブのかかったボブカットがドアから覗いた。 「夏世、おはよう」  ソラが挨拶を返せば、彼女はニッと笑って手を上げる。 「もー、夏世ねぇ、早いよぉ」
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