第一章 七不思議のうわさ

2/12
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
 息を切らせて入ってきたのは夏世の妹、夜深。  腰まで届くロングヘアをツインテールにしてリボンを結んでいた。  小柄で華奢なのと相まって、年齢よりも幼く見える。 「ごめん、夜深ちゃん。部活の朝練があるから急いでたんだよー」  妹に答えながら、夏世は食卓につく。  彼女は女子テニス部に所属しており、大会のレギュラーメンバーに選ばれるほどの実力を持っている。  運動全般が得意だが、勉強は苦手なタイプだ。  一方の夜深は勉強は得意なのだが、体が弱いため運動は苦手だった。  低血圧なこともあり、早起きも得意ではないらしい。  目が開ききっていない夜深に、ソラはホットココアを手渡した。 「おにい、ありがとう」  湯気の立つマグカップを受け取り、夜深がココアを口に含む。 「夏世は目玉焼きと納豆でいい?」 「もちろん! 卵は半熟でね! あと、味付け海苔も忘れないで!」  まるで自分の家に居るような感覚で振る舞う夏世だが、ソラは気にもとめずに目玉焼きを作り始める。  同時に冷ましていたおかずを弁当箱に詰め、昼食のお弁当も仕上げていた。 「本当、ソラって器用だよね。主婦顔負けじゃん」  夏世は食事ができるのを待ちながら、冷蔵庫から牛乳を取り出しコップに(そそ)ぐ。 「それ、言われても嬉しくない」  微妙そうな顔をした幼馴染みを見て笑い、コップに()いだ牛乳を飲み干した。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!