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息を切らせて入ってきたのは夏世の妹、夜深。
腰まで届くロングヘアをツインテールにしてリボンを結んでいた。
小柄で華奢なのと相まって、年齢よりも幼く見える。
「ごめん、夜深ちゃん。部活の朝練があるから急いでたんだよー」
妹に答えながら、夏世は食卓につく。
彼女は女子テニス部に所属しており、大会のレギュラーメンバーに選ばれるほどの実力を持っている。
運動全般が得意だが、勉強は苦手なタイプだ。
一方の夜深は勉強は得意なのだが、体が弱いため運動は苦手だった。
低血圧なこともあり、早起きも得意ではないらしい。
目が開ききっていない夜深に、ソラはホットココアを手渡した。
「おにい、ありがとう」
湯気の立つマグカップを受け取り、夜深がココアを口に含む。
「夏世は目玉焼きと納豆でいい?」
「もちろん! 卵は半熟でね! あと、味付け海苔も忘れないで!」
まるで自分の家に居るような感覚で振る舞う夏世だが、ソラは気にもとめずに目玉焼きを作り始める。
同時に冷ましていたおかずを弁当箱に詰め、昼食のお弁当も仕上げていた。
「本当、ソラって器用だよね。主婦顔負けじゃん」
夏世は食事ができるのを待ちながら、冷蔵庫から牛乳を取り出しコップに注ぐ。
「それ、言われても嬉しくない」
微妙そうな顔をした幼馴染みを見て笑い、コップに注いだ牛乳を飲み干した。
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