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夏世は慌てた様子でバタバタとダイニングを出ていく。
残された二人は顔を見合わせ、ため息を吐いた。
「あ、夏世ねえ、お弁当忘れてる」
「教室で渡すよ」
夜深に答えながら、ソラが席を立つ。
トレーに食器を重ねてシンクまで運び、洗い始めると夜深から声が掛かる。
「桜高の七不思議、去年は流行らなかったの?」
気になっていた話に戻り、ソラは手を止めた。
「七不思議どころか、怪談すら聞いたことないよ。噂といえば、生徒会長が二重人格なんじゃないかって言われてるけど」
ソラと夏世が一年生の時、現在の生徒会長である並木明香についての噂を聞いたことがある。
当時、二年生で生徒会の副会長を務めていた明香は、成績優秀で品行方正かつ謙虚な美少女と有名だった。
一方で、彼女がとても冷たく見えたり、取り巻きから離れて一人で過ごしていることがある。
そのせいか『並木明香は二重人格なのではないか?』と噂されていた。
「生徒会長――並木先輩だったよね。うーん、そんな風には見えなかったけどなあ」
入学式で挨拶をしていた明香を思い出し、夜深は首を傾げる。
「だから、ただの噂だって」
「うん、私もそう思う」
ソラに夜深が同意した。
「もし、生徒会長さんが二重人格だったとしても、その表現は正しくないよ」
「ああ、多重人格って言うんだっけ」
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